はじめに:融資が厳しい今こそ「積算評価」で物件を選ぶ
銀行が融資額を決めるときの中心にあるのが「積算評価」です。同じ年収・同じ自己資金でも、積算評価の高い物件を選べば融資は通りやすくなります。
特に、年収や自己資金に不安がある人ほど、物件の担保価値によって融資の通りやすさが大きく変わります。
銀行は「万一返済が止まっても、物件を売れば回収できるか」をより厳しく見るようになっています。その物差しが積算評価です。この記事では、積算評価と担保評価の意味、計算方法、自分で調べる手順を順に解説します。
積算評価・担保評価とは?収益還元評価との違い
積算評価とは、土地と建物の価値を別々に計算して足し合わせる評価方法です。金融機関が担保価値を決めるときの根拠になります(東急リバブル)。計算で出した金額を「積算価格」「積算評価額」と呼びます。
担保評価とは、金融機関が「この物件を担保にいくらまで貸せるか」を決めるための評価です。積算評価や収益還元評価をもとに、各行が独自の基準で決めます。融資額の上限は担保評価額の70~80%が目安とされます(HOME'S不動産投資)。
評価方法 | 何を見るか | 高く出やすい物件 |
|---|---|---|
積算評価 | 土地の価値+建物を建て直す費用(築年数で減額) | 土地が広い、路線価が高い、築浅いRC造 |
収益還元評価 | 将来生み出す家賃収入 | 利回りが高い、満室が続く都市部の物件 |
担保評価 | 上の2つをもとに、各行が決める貸せる金額の根拠 | 金融機関によって異なる |
どちらを重視するかは金融機関によって違います。ただし、積算評価は路線価など公的な数字で計算できるため、買う前に自分で目安を出せるのが大きな利点です。
積算評価の計算方法
積算評価は「土地の評価額+建物の評価額」で計算します。
土地の評価額
土地の評価額 = 路線価(円/m²)× 土地面積(m²)× 補正率
路線価の代わりに公示地価を使う金融機関もあります。補正率は角地や不整形地など土地の形で増減します(東急リバブル)。
建物の評価額
建物の評価額 = 再調達価格(円/m²)× 延床面積 ×(法定耐用年数 − 築年数)÷ 法定耐用年数
再調達価格とは、同じ建物を今建て直した場合の1m²あたりの費用です。金融機関ごとに基準が違い、公開されていません。
構造 | 法定耐用年数 | 再調達価格:従来の目安 | 再調達価格:国税庁2018年データ |
|---|---|---|---|
RC造・SRC造 | 47年 | 20万円/m² | RC 26.3万円・SRC 30.4万円 |
重量鉄骨造 | 34年 | 18万円/m² | 21.4万円 |
軽量鉄骨造(厚さ3~4mm) | 27年 | 15万円/m² | 16.8万円 |
軽量鉄骨造(厚さ3mm以下) | 19年 | 15万円/m² | 16.8万円 |
木造 | 22年 | 15万円/m² | 16.8万円 |
出典:従来の目安は健美家、国税庁データと耐用年数はHOME'S不動産投資。建築費の上昇を反映し、木造約18万円・RC造約28万円とする例もあります(東急リバブル)。自分で計算するときは、低めの「従来の目安」で試算すると安全です。
計算例:築12年の木造アパート
条件は、土地200m²・路線価10万円/m²、延床面積150m²、再調達価格15万円/m²とします(補正なし)。
項目 | 計算 | 金額 |
|---|---|---|
土地 | 10万円 × 200m² | 2,000万円 |
建物 | 15万円 × 150m² × (22年−12年)÷22年 | 約1,023万円 |
積算評価 | 土地+建物 | 約3,023万円 |
この物件が2,800万円で売られていれば、積算評価が価格を上回る「積算が出る物件」です。逆に4,500万円なら、積算評価は価格の約67%しかなく、足りない分を自己資金で埋めるよう求められやすくなります。
なお、築年数が法定耐用年数を超えると、建物の評価は原則ゼロになります。築25年の木造なら、評価されるのは土地だけです。
担保評価額の調べ方:路線価で自分で試算する
土地の評価に使う路線価は、国税庁の「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」で無料で調べられます。現在は令和8年分(2026年分)が最新です。
路線価を調べる手順
- 国税庁の路線価図のサイトで、物件のある都道府県を選ぶ
- 「路線価図」を選び、市区町村を選ぶ
- 町名の横にあるページ番号をクリックする
- 地図上で、物件が面している道路の数字を確認する
手順はLIFULL HOME'Sを参考にしています。
路線価図の見方
道路に書かれた数字は、1m²あたりの価格を千円単位で表します。数字の後ろのアルファベットは借地権割合です(国税庁:路線価図の説明)。
- 例:「300D」なら、1m²あたり30万円、借地権割合60%
- 借地権割合:A 90%、B 80%、C 70%、D 60%、E 50%、F 40%、G 30%
- 積算評価で使うのは数字のほうです。借地権割合が高ければ高いほど好立地で、担保評価が伸びやすい傾向があります
路線価がない地域(倍率地域)の場合
郊外や地方では路線価がなく、「評価倍率表」を使う地域があります。その場合は次の式で計算します(LIFULL HOME'S)。
土地の評価額 = 固定資産税評価額 × 評価倍率
固定資産税評価額は、売主や仲介会社に確認しましょう。
公的な土地価格との関係
路線価は公示地価の約8割、固定資産税路線価は約7割が目安です。路線価は毎年7月1日に国税庁が公表します(東証マネ部!)。実際の売買価格はこれより高いことが多いため、都心では積算評価が売買価格を下回りやすくなります。
ここで出した金額はあくまで目安です。実際の担保評価額は金融機関の内部基準で決まるため、最終的には金融機関に確認しましょう。
積算評価が高い物件の特徴と注意点
積算評価が高く出るのは、土地が広く路線価が高い物件と、法定耐用年数が長く残っている物件です。
積算評価が高く出やすい物件
- 土地が広い:建物は年々評価が下がりますが、土地は下がりません
- 路線価に対して売買価格が安い:郊外や地方では、積算評価が実際の価格を上回ることが多いです(健美家)
- 築浅のRC造:耐用年数47年で、建物の評価が長く残ります
積算評価だけで選ぶと失敗するポイント
- 空室リスク:積算が高い地方物件でも、入居者がいなければ返済できません。収益還元評価と合わせて見ましょう
- 旧耐震(1981年5月以前の建築確認):金融機関によっては融資の対象外や、条件が厳しくなります
- 耐用年数を超えた建物:建物の評価がゼロに近く、融資期間も短くなりやすいため、毎月の返済額が増えます
- 再建築不可・市街化調整区域:路線価があっても、担保として評価されにくい土地です
「担保評価割れ」に注意
担保評価割れとは、借入残高が担保評価額を上回っている状態です。積算評価の低い物件を溢れるほどのローンで買うと起こりやすく、次の物件を買うときの融資や売却の妨げになります。最初の1棟目で積算評価の高い物件を選ぶと、次の融資につなげやすくなります。
よくある質問
Q. 積算評価と担保評価は同じですか?
同じではありません。積算評価は計算方法のひとつで、担保評価はそれをもとに金融機関が決める「貸せる金額の根拠」です。
Q. 積算評価が売買価格を下回ると融資は受けられませんか?
受けられないわけではありません。ただし、足りない分を自己資金で埋めるよう求められやすくなります。年収や資産で補えるかも影響します。
Q. 積算評価は自分で計算できますか?
できます。路線価・土地面積・延床面積・構造・築年数がわかれば、この記事の式で目安が出せます。ただし再調達価格は金融機関ごとに違うため、幅を持って考えましょう。
まとめ
- 積算評価=土地(路線価×面積)+建物(再調達価格×延床面積×残りの耐用年数の割合)
- 路線価は国税庁のサイトで無料で調べられる
- 融資審査が厳しくなっている2026年は、積算評価の高い物件ほど融資を引きやすい
積算評価の高い物件を探すのは手間がかかります。積算100では、積算割合100%以上の物件をまとめて紹介しています。融資が通らずに困っている方は、物件選びと資金調達の両方をお問い合わせからご相談ください。

